2022-04-24 14:49:08 +05:30

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—第三折·二矢珠—
生:範皆
旦:梓心
婆:張ばあ
浄:呉旺
丑:呉一、呉二
『第一場』
(範皆、梓心、両端から出場)
(語)
範皆:早朝は犬が活気良く吠える。
梓心:日照は屋根の雪を薄めます。
(話)
範皆:もしかして梓心か?
梓心:はい、範皆さんだったのですね。
(東塘散櫂)
範皆:昨晩は夢の中で愛する人と会っていた。
梓心:別れの時は悲しいけれど、またお会いできました。
二人:願い事が叶った。
(話、声を揃えて)
梓心:範皆…
範皆:梓心…
(話)
範皆:朝日が海面に昇り、埠頭の作業が始まる。私は仕事に行かなければ。
範皆:梓心、私は先に行く。
(梓心、範皆を見送る。範皆、遠くで振り向く。梓心、頭を上げ下げし、範皆退場。梓心、手を胸に交わす。)
(東塘揺櫂)
梓心:別れの時は思いが湧き出てしまいます。
(梓心退場)
『第二場』
(緑の服を着た呉旺、呉一と呉二を連れ歩く)
(語)
呉旺:俺様は呉旺だ、この町の頭みたいなもんさ。
呉旺:今日は退屈だから、町に遊びに来た。
(話)
呉旺:呉一、呉二!
(共に話す)
二人:はい!
(話)
呉旺:何か新鮮な物が食いたいな。
呉一:エビのポテト包み揚げはいかがですか?
呉旺:豪華の食いもんは飽きたから、たまにはそういうのも良さそうだな。
呉旺:呉二、エビのポテト包み揚げが売ってる、いい店を探しに行くぞ。
呉二:かしこまりました。
呉旺:ただ、揚げ加減は重要だぞ。少しでも黒焦げになったやつは要らないからな。
呉二:黒焦げは要らないっと、はい、メモしておきました。
呉旺:そして、大きさは均一じゃないとダメだ。大きかったり小さかったりするのは——
呉二:大きさは均一っと、はい、これも覚えておきました。
呉旺:よし。
呉二:他に何かご要望がありましたら、遠慮せず言ってください。
呉二:もしあの店が下手くそだったら、いつものやり方で——
呉一:いつものって?
呉二:モラを渡さない。
呉旺:それ、今回はなしだ。あの魚屋を見てみろ、べっぴんさんが居るぞ。
(東塘揺櫂)
呉旺:まず状況を訊ねてみよう、運が良ければ彼女が手に入る。
(呉旺、梓心へ顔を向ける)
(話)
梓心:お客さん、新鮮なお魚はいかがですか?
呉旺:ほぅ、どれどれ。お嬢ちゃんどこの人?ご両親は?
梓心:私は幼い頃からこの港町で育ちました。両親が年を取ったので、家族を養うためここで魚を売っています。
梓心:なぜこんなことを聞くのですか?
(後ろへ向き、独り言を言う)
呉旺:よしよし。両親が傍にいない今こそ良いチャンスだ。
(梓心へ顔を向ける)
呉旺:じゃあ、俺のお嫁さんになってくれないか?
梓心:ええっ、私はずっと仕事で忙しく、そのようなことは考えた事もありません。
梓心:それに、魚を買うのとあまり関係ない気がしますが。
(後ろへ向き、独り言を言う)
呉旺:よっしゃ。男がいないんだな。さらっても誰も助けに来やしない。
(梓心へ顔を向ける)
呉旺:好きな男はいるのか?
(梓心、下を向いて沈黙)
(東塘散櫂)
呉旺:あの様子だと、きっと好きな奴がいるんだな。
呉旺:野郎ども、このべっぴんさんをさらうぞ。
(呉旺、呉一、呉二、梓心をさらって退場)
『第三場』
(張ばあ出場)
(話)
張ばあ:雲菫の芝居をよくご覧になっている方なら、この後の進展も大体予想がつくじゃろう。
張ばあ:この後は他でもなく、激しい戦闘になってしまうのじゃ。
張ばあ:大英雄の誕生も、ちょいときっかけを与えんとなぁ。
張ばあ:悪さをする悪獣は、人の生活を混乱させ、平和の風を乱す。だがその無秩序こそ、英雄を作り出すきっかけになるのじゃ。
張ばあ:雄々しい勢いで事を沈ませれば、歴史に名前を残せる。だが、もしそこで逃げたら…
張ばあ:張皆だの王皆だの範皆だの、誰も名を覚えてくれんじゃろう。
張ばあ:ましてや、ただでさえ強い男が美女を救う話は人気があるんじゃ。
張ばあ:とにかく、範皆がどう出るか拝見するとしよう。
(範皆出場)
(話)
張ばあ:おい、遅かったじゃないか!
張ばあ:梓心がここの有名な不良に連れ去られたぞ!
(東塘快櫂)
範皆:まさか——そんな——
範皆:状況を知った私は驚きと怒りを隠せなかった、まさかこんな事件が起こるとは。
範皆:悪党にとって強盗殺戮など何でもあり得る。もしこの私が行ったら…
範皆:生きて帰れないかもしれない。
(張ばあ、腕輪を範皆へ渡す)
張ばあ:範皆よ、ど、どうすればいいんじゃ?
(東塘快櫂)
範皆:腕輪を目にした時、決意を決めた——
範皆:か弱い女性が悪党に勝てるわけがない。
範皆:腕輪を手に、剣を抜いた。あの呉旺と言う奴を、コテンパンに懲らしめてやる。
(呉旺、張ばあ退場)