2022-04-24 14:49:08 +05:30

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長年流浪してきた傾奇者は、もうそのことを思い出さないだろう。
しかし目を閉じると、たたら砂の月夜や炉火が見える。
若く、心優しい副官が言った。
「この金の飾りは、将軍から授かった身分の証である。」
「世を渡り歩く時、やむを得ない場合を除き、」
「身分を決して他人に明かしてはならない。」
剛直な目付は言った。
「この金の飾りは、将軍から授かった身分の証。
だが、あなたは人間でも器物でもない。
このような処遇となり心苦しいが、どうか恨まないでいただきたい!」
昨日を捨てた傾奇者は、もうそのことを思い出しはしないだろう。
しかし耳を塞いでも、その時の豪雨や嵐は聞こえてくる。
期待に満ちた目をした者が言った。
「この金の飾りは、将軍から授かった身分の証である。」
「きっと人々を苦しみから解放できるだろう。」
美しくて活気がある巫女が言った。
「この金の飾りは、将軍から授かった身分の証である。」
「将軍は決してあなたを見捨てない。」
「私も最善を尽くし、即刻の救援を手配する…」
…しかし、金色の矢羽はやがて埃に埋もれ、
すべての物語も業火に焼き尽くされ、消えてしまった。