長年流浪してきた傾奇者は、もうそのことを思い出さないだろう。 しかし目を閉じると、たたら砂の月夜や炉火が見える。 若く、心優しい副官が言った。 「この金の飾りは、将軍から授かった身分の証である。」 「世を渡り歩く時、やむを得ない場合を除き、」 「身分を決して他人に明かしてはならない。」 剛直な目付は言った。 「この金の飾りは、将軍から授かった身分の証。 だが、あなたは人間でも器物でもない。 このような処遇となり心苦しいが、どうか恨まないでいただきたい!」 昨日を捨てた傾奇者は、もうそのことを思い出しはしないだろう。 しかし耳を塞いでも、その時の豪雨や嵐は聞こえてくる。 期待に満ちた目をした者が言った。 「この金の飾りは、将軍から授かった身分の証である。」 「きっと人々を苦しみから解放できるだろう。」 美しくて活気がある巫女が言った。 「この金の飾りは、将軍から授かった身分の証である。」 「将軍は決してあなたを見捨てない。」 「私も最善を尽くし、即刻の救援を手配する…」 …しかし、金色の矢羽はやがて埃に埋もれ、 すべての物語も業火に焼き尽くされ、消えてしまった。