2022-04-24 14:49:08 +05:30

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Plaintext

人々はよく戦場を地獄に例えるが、それは例えに過ぎない。
だが、目の前にある情景は、文字通りの地獄である。
荒れ果てた地、枯れた木、それと歩く屍のような民たち。
生命力が汲み取られたかのように。
「実は、」
武士は枯れ葉を一枚拾ったが、すぐに灰となって散っていった。
「ここの生命力は確かに汲み取られている。」
近畿の戦争は百年も続いた。
戦争の十年目から、諸国の物資も財力も使い切った。
戦争が今まで続けられるのは、奈苦羅の術と呼ばれるものがあるからだ。
奈苦羅の術というのは、全ての生物と大地の中から生命力を汲み取り、それを上位の武士と戦争に使う恐ろしい術である。
こんな非道な術で国を支配しているのは、奈苦羅大名と呼ばれる盗国者たちだ。
大名たちは互いに攻伐していた。だが、戦争の結果が何であろうと、大地の生命力はさらに奪い取られる。
これは、この百年に渡る近畿諸国の戦争の実態である。
「この術を作り出したのは、世界の中心にある空の塔にいる陰陽師たちだ。」
目の前の情景に動揺した美奈姫を無視し、武士は静かに話を続けた、
「破滅をもたらす姫と言うが……この世界は、とっくに破滅に向かっているじゃないか?」