人々はよく戦場を地獄に例えるが、それは例えに過ぎない。 だが、目の前にある情景は、文字通りの地獄である。 荒れ果てた地、枯れた木、それと歩く屍のような民たち。 生命力が汲み取られたかのように。 「実は、」 武士は枯れ葉を一枚拾ったが、すぐに灰となって散っていった。 「ここの生命力は確かに汲み取られている。」 近畿の戦争は百年も続いた。 戦争の十年目から、諸国の物資も財力も使い切った。 戦争が今まで続けられるのは、奈苦羅の術と呼ばれるものがあるからだ。 奈苦羅の術というのは、全ての生物と大地の中から生命力を汲み取り、それを上位の武士と戦争に使う恐ろしい術である。 こんな非道な術で国を支配しているのは、奈苦羅大名と呼ばれる盗国者たちだ。 大名たちは互いに攻伐していた。だが、戦争の結果が何であろうと、大地の生命力はさらに奪い取られる。 これは、この百年に渡る近畿諸国の戦争の実態である。 「この術を作り出したのは、世界の中心にある空の塔にいる陰陽師たちだ。」 目の前の情景に動揺した美奈姫を無視し、武士は静かに話を続けた、 「破滅をもたらす姫と言うが……この世界は、とっくに破滅に向かっているじゃないか?」