2022-04-24 14:49:08 +05:30

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「水引」という結び方をしたお守り。
願いと縁を固く結ぶことができるという。
何でも知っている狐様に師事し、神社の事務を勉強した。
あの頃の私は、小さな漁村から鳴神に来た幼い巫女だった。
茶筅よりも鈍く、子供っぽいわがままや好奇心も抱いていた。
斎宮様の優雅で回りくどい言葉に、いつも無邪気な疑念を持っていた。
「物事は絆で結ばれ、故に実の中から希う幻が生まれる」
「お守りに願いを実現する力はない。でも、絆の力で、それを永遠にできる」
私が茫然としている様を見て、狐様は耐えきれない様子で笑った。
楽しそうに煙管で私の頭を軽く叩き、すぐさま話題を変えた。
「響ちゃんも、因縁の人と出会ったんだね?」
「あんな野蛮人と因縁なんてありません!」
「あら、そうかしら?」
そして闇夜がすべてを呑み込んだ。
因縁とやらも、失われてしまった。