2022-04-24 14:49:08 +05:30

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Plaintext

空っぽの盃にマグマの余熱がまだ残っている。
火渡りの賢者の酒盃。数多くの知恵がこの酒盃から溢れていた。
烈炎を操る賢者に弄ばれても、高温による傷は一つもない。
賢者がマグマを飲み物とするという噂があったが、賢者はそれを戯言としか思わなかった。
美酒は高温によって揮発してなくなるが、知恵は全ての灼熱に耐える。
賢者にとって、美酒は天賦の才の助燃剤に過ぎなかった。
酔っ払った時の火花がインスピレーションを燃やす。
無言の酒盃、知恵が炎から誕生したことを見届けた。
賢者は最後の遠征をする前、盃は孤高に溢れた。