2022-04-24 14:49:08 +05:30

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偵察騎士に新米が入隊するのはずいぶん昔のことであった。
素質がある後輩が入ってきたらこの風の翼を直接渡そうと、アンバーは思っていた。
しかし何年が経っても、その日がくることはなかった。
偵察騎士は風の翼の使用率が高い職業である。何年もかからないうちに消耗する。
それに、アンバーの行動スタイルは結構「翼を消費する」、彼女に消耗された風の翼は少なくとも十着以上ある。
けれど、彼女は一度もこの「特別な」風の翼を使おうとしなかった。
なぜだか、その日は特別にいい気分だった。
久々に、アンバーはこのほとんど新品の風の翼を持って家を出た。
その日に郊外の討伐任務があったはずなのに。
その数日間風災が多発して、滑翔が極危険になっているはずなのに。
それからは…
どうしてかその金髪の異邦人を信じることになった。
どうしてかそいつに素質があると判断した。
あの人ならば、もしかして…
「それで、お礼っていうのはね——」