2022-04-24 14:49:08 +05:30

20 lines
1.3 KiB
Plaintext

遥か昔、彼岸に船を泊める場所がまだなく、雲煙の立ちこめる山しかなかった時代。
その山の持ち主が何を植えるか迷っていると、他の者に先を越されてしまった。
「この木が成長したら、葉を摘んで茶を淹れよう」
「その時が来たら、留雲借風と理水畳山たちをここに呼び…」
「私の土地に木を勝手に植えたくせに、そんなことを考えるとは」
山の王である少女は怒りを露わにしたが、ついお茶の香りを想像してしまった。
そして、誰かがこの玉玦を小さな木の細い枝にこっそりと結びつけた。
その後、山の持ち主は戻ってきたが、別の姿となっていた。
紐を解く指も失われている。だが、それはもうずいぶんと昔の出来事…
長い年月を経た後、その枝は山民によって向こう岸へと移植された。
お茶の香りも沈玉の谷から璃月港へ、さらに様々な場所へと広がった。
沈玉の谷にある茶の木に関して、様々な伝説がある。その中の一つはこのようなものだ。
水文、土壌、日照に関わらず、この木は沈玉の谷でしか育たない。
それは遠い昔、茶の木の苗の傍で旧友と交わした約束を覚えているからだ。