2022-04-24 14:49:08 +05:30

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Plaintext

黒狐の達の話は一段落したが、ここでもうしばらく、筆者の談話にお付き合いいただきたい。
当時の有楽斎様が何をして斎宮様の怒りを買ったのか、今となっては知り得ないこと。ただその時の八重様は、二三四五六七八杯ほど多く酒を飲んだせいで、自らが経験した歴史の一部を私に話してくれた。
また、この談話ではすべて実話を記すつもりだ。
当時狐斎宮様が白辰の野を離れ、鳴神大社に赴任した時、八重様はまだ生まれていなかった。そのため、彼女は幼い頃から斎宮様の物語を聞きながら育った。彼女は斎宮様を愛し、尊敬していた。
それが原因からか、八重様も最後には鳴神大社に赴任した。
血脈が近いことから、斎宮様は幼い八重様の面倒をよく見ていた。しかし今の八重様は、あの頃の日々をできるだけ思い返さないようにしている…
——実話を保証しているとはいえ、編集に削除される可能性があるため、八重様の過去についてはこれ以上明かさないようにしておこう。
話は有楽斎に戻る。当時、有楽斎様がなんの理由で斎宮様の怒りを買ったのか、今となっては知る由もない。ただ分かっているのは、彼の所為がアビスの侵攻に関係しているかもしれないということだ。
しかし有楽斎様が追い出された後、狐斎宮様は鳴神大社から天守へ移り変わった。
「天地を巻き込む災厄が訪れる。私には民と主君を守る義務がある。そのため一刻も早く、将軍様のもとへ向かわなければならない。」
斎宮様が二度目に離れた時、八重様はまだ少女の年齢だった。ずっと追いかけていた人が再び彼女のもとを去ってしまった。斎宮様の言葉の意味を理解したのは、災厄が島を襲った後のことだった…
すべてが遅すぎた、すべてが思いとは裏腹になった…
斎宮様が三度目に離れた時、それは同時に、永遠の別れを意味した。
五百年の時は凡人にとって長きものだが、その間に起こった喜びや悲しみは、朝生暮死の存在であろうと、永遠不滅の存在であろうと、簡単に拭い去れるものではない。