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子狐は遠くへ向かいながら、何度も名残惜しそうに振り返り、俺達に手を振ってくれた。やがて、その背中はどんどん小さくなり、最終的には白い点となって、蒲公英の海の中へと消えていった。
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子狐が見えなくなると、彼女は振り返り俺に近付いてきた。
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一歩二歩と、近付いてくるにつれ、狐はどんどん大きくなる。
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俺の前に来た時に、狐は人の姿になっていた。
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背が高く、スラリとした長い首と白い肌を持った人だ。その瞳は湖のように、キラキラと輝いていた。まるで、太陽が木の葉の間から、水面を照らしているような光だった。
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(本当に綺麗だな。俺が片思いしていた子によく似ている。名前はもう覚えてないが、この目は絶対に彼女と同じ目だ)
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俺は思った。
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術も狐が人になるのも、この輝く湖、宝石如く瞳とは比べ物にならない。俺達はどこまでも続く蒲公英の海の中で、何も言わずじっと立っていた。
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やがて、沈黙に耐えられなくなった俺は口を開いた。
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「それが俺に教えてくれる狐の術なのか?」
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「そうです。長い間、本当にありがとうございました」
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彼女は頭を下げ、俺にお辞儀をした。黒い長髪が、流れる水のように肩から落ちた。
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子狐との別れは俺の心に穴を空けたが、これで変化の術を教えてもらえると思うと、胸が躍った。
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術を習得すれば、俺は鳥になって高い空を飛べる。一体どこまで高く飛べるのだろうか? 魚にだってなれる。そして、まだ行った事もないマスク礁まで泳いでいくのだ。
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「ハハ、狩りにだって使えるぞ」俺は思った。「肉の入ってない鍋とはおさらばだ」
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「では、そのままじっとしていてください」
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彼女は俺の周りをクルクルと歩く。一周する度に、彼女の姿はどんどん大きくなっていった。
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いや、それだけではない。周りの蒲公英もどんどん伸びている。最初は足元までしか届いていない蒲公英が、今は腰の位置までに来ている。最後は天にそびえる大木のようになった。
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何かがおかしいと気付いた時には、彼女は既に巨人になっていた。 |