2022-04-24 14:49:08 +05:30

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吹いていた夜風が止み、池に映った月が丸くなり、少年は初めて精霊の声を聞いた。
人間と比べれば、精霊は生まれつき繊細で敏感な生き物。少年は思わず彼女の哀歌のような優しい声に心を奪われた。
繊細さと敏感さを持つ精霊だからこそ、少年の目から彼の隠しきれない思慕と今にも口に出しそうな誓いの言葉を感じた。
精霊は慌てた。
人間の命は強いが儚い。少年もいずれ成長し、そして歳を取る。若さと純真さが色褪せて、彼はどうやって原素の無垢な末裔と向き合うのか?歳を取った彼は、若さ故の過ちと自分を責めるのではないかと精霊は思った。
泉水の精霊は純粋で優しいが、人間の愛を分かっていない。彼女は人の奇跡を見たことがない。千年の月日を普通だと考える彼女にとって、別れは恐ろしいものだった。
人間が奇跡だと思う長年の時は、元素の精霊にとって儚く美しい一時にすぎない。
だが愛する人の衰えを阻止することは、たとえ精霊の力であってもどうにもならない。
そんな日を待ち望んでいない繊細な精霊は、口づけをして少年を止めようとした。
だが愚かにも少年は、精霊の冷たい拒絶の口づけを、自分の決心を受け入れたものだと勘違いした。
その瞬間、精霊はいつか少年から離れることを決意した。
その瞬間、少年は永遠に清泉のそばにいると誓った。