…… 「それで、君は幽霊じゃないの?」 「違う!私は死んでないもん!」 「でも生きてもいないみたいだけど?」 「うっ、それもそうね……」 自分のことを「式神」というおしゃべりな少女は大きく口を開けて団子を呑み込んだ。喉を詰まらせないか、ハマヴァラーンはひやひやしながら見ていた。 「しいていえば、私の場合、『使い魔』のほうが近いかな?」 「やっぱり霊の類じゃないか……」 「そういうのとは違うの!」 やいやい言い争っているうちに、ハマヴァラーンはようやく理解した。この子はスメールで言う「鎮霊」に似た存在なのかもしれない。 真名で契約を交わし、真名で使役する。世界の神秘術は皆本質的には似ているのだ。もしかしたらそれこそ人間の最も根本的な恐怖の一つ、掌握される恐怖を体現しているのではないか。 そんなことを考えながら、ハマヴァラーンは神秘学を履修しなかったことを後悔した。何故よりによって海洋生物研究なんて人気のない課程を選択したのだろう…… 稲妻に行かないといけないし、生き地獄のような論文地獄が待っている…… にぎやかなやつが付いてきたのは、何かの転機なのかもしれないが……