平和十三年、戦国の世の頃だった。 近畿から離れた北の諸国も、時代の波に呑まれ、戦火に見舞われた。 全ての戦争のように、死闘を繰り広げた後、一方は敗北した。そして、城は燃やされ、廃墟となった。その主の家眷と残党も山の奥に逃げ込んだ。 この舞台にも特別なところは何もなかった。 だがその時、ある華麗な服装を着ている浮浪武士が現れた。 いや、華麗な服装を着ているというより、正確には…… そう、女装だ。 それと反対に、彼と同行していたのは、大きすぎる羽織を身に纏っている小柄な女性だった。 とにかく、どう見ても、彼らは怪しい人物にしか思えない。 彼らはそれに気づいていなかったようで、堂々と山の麓にある関所まで歩いた。 予想通り、彼らは関所を守る足軽に止められた。 「何者だ!」 通常これはただの決まり文句のはずだが、今回は心の底からの質問のようだ。 「見ての通り、ただの通行人だ。」 説得力のない答え。 武士のその疑う余地のない一言にひるんだのか、質問した足軽は少しためらったようだ。 「とにかく、ご同行お願いします。」 「やっぱりだめか……」 失望の色が武士の顔に浮かんだ。突然、三人の足軽は声と同時に倒れた。 「やっぱり最初からそうするつもりだったんだ。本当に性悪なやつ。」 後ろの女性は小声でそうツッコミを入れた。