—第五折·双珠還— 生:範皆 旦:梓心 武丑:呉旺 『第一場』 (範皆左側から出場、梓心右側から出場、呉旺両目を閉じ横たわる) (二人は同じく呉塞の中、暗闇を進む) (暗闇で互いの手に触れる、しかし相手が誰か分からない) (呉旺起きる) (話) 呉旺:この娘、いい根性をしてる。俺様に立ち向かうとは。 呉旺:もう近くにはいない。どうやら堂内に行ったか。 呉旺:フンッ、夜も遅い、門も閉まってる。 呉旺:壁を乗り越えなければ、外には行けない。たかが女に逃げられるわけがない。 (呉旺振り返り堂内へ) (話) 呉旺:ケッ、こいつら酔っぱらって灯りもつけてないのか。 呉旺:灯りをつけてあの女を探そう。 (呉旺暗闇で範皆の足を踏む。呉旺と範皆驚く) 呉旺:お嬢さんここにいたのか、ハハハッ。 (呉旺両手を広げ範皆へ向かう。範皆それを躱す。両者駆け回る。梓心隅でうずくまる) (呉旺、範皆を捕まえる) 呉旺:ハハハッ、やっと捕まえた。 (話) 呉旺:ん?ちょっと見ないうちに、だいぶガタイが良くなったんじゃないか? 範皆:寒かったので服を着たのです。 呉旺:ほう、たしかに寒い時は服をたくさん着た方がいい。 呉旺:じゃあなんで身長も伸びてるんだ? 範皆:舞台で歌うために、厚底の靴を履いているのです。 呉旺:ほう、それは大変だ。 呉旺:じゃあなんで手がこんなに荒っぽいんだ? 範皆:それは——耳をお貸しください。 呉旺:おう、いいぜ。 (範皆、剣で呉旺を刺す) 範皆:剣を持って貴様の命を取るためだ。 (呉旺倒れる) 『第二場』 (話) 範皆:悪党よ、剣の下で嘆くがいい。 梓心:あなたは、範皆さんでしょうか? 範皆:その声、梓心か? (梓心、範皆と手を触れ合う) 梓心:範皆さん! 範皆:苦しかったであろう。 範皆:悪党はもうやっつけた。あとはその手下どもだけだ。 範皆:頭領を失った奴らは逃げるしかあるまい。 範皆:心配するな、すぐに門を破る。 (範皆、門を破る) 梓心:あなたが来なければ、私の命はありませんでした。 (東塘揺櫂) 梓心:私の心をあなたに捧げます。 範皆:共にどこまでも。 範皆:月光が差し花々が咲く場所へ。 梓心:この誓いを永遠に。 —完—