辰砂色の古い崖には、鮮やかな花も咲いている。 黒い血が溢れるこの時代に、わずかな穢れにも染まっていない。 千岩牢固、揺るぎない。たとえ暗色の妖魔を前にしてもである。 沈黙を貫く山民と鉄色の明月が、彼らのため静寂な陣地を築いてくれた。 「岩々と琉璃晶砂の娘よ。どうか私のために泣かないでくれ」 「天衡の影に生まれし私は、岩王の恩恵に報いるため戦う」 「四臂夜叉に命を託し、蛍光の深淵へと向かおう」 「暗く深い洞窟の影の道、浮遊する険しき岩宮の晶石」 「湧き出す深淵の汚れし流れ、山の底に伏す歪みし妖魔」 「どんな恐怖や奇異も、私の心を怯ませはしない」 夜風が千岩軍の兵士を遮り、彼に別れの言葉を言わせなかった。 忘却の証として山民の娘に残されたのは、この小さな花だけ。 「私が唯一恐れることは、忘れ去られることである」 「もし厄運が私を無名の地に埋めようとも、どうか私のことを忘れないでくれ」