神社で吉凶を占うためのみくじ筒。 狐が与えた運気をまとっているという。 占いは迷人の問いであるため、吉凶問わず、先に進めるための回答になる。 平たく言えば、この世に迷いを持って問う者がいても、不確かな占い結果は存在しない。 神社で学んだ時間はとても大切だった。私でさえも狐様の言い回しができるようになった。 その間、人間味のなかった影向天狗様が娘を授かった。 お馬鹿な昆布丸も、将軍殿下の旗本になり、武家の女の子を娶るそうだ…… 「かわいい子。殺伐としていた天狗様も、少しは母親の自覚を持てるようになったのね……」 「しかし……神社に子供の生気が足りないわ。これはいけない。響ちゃん、子供に戻ってくれない?」 いつものように、狐様は大げさな冗談を言って、緋櫻酒の酒気を帯びて顔を近づけてくる。 「そんな仏頂面しないでよ、響ちゃん。斎宮様が占ってあげようか?」 「アハ、大吉よ!ほら、大吉!どういう意味か知ってる?」 「凶のくじを全部抜き取ったからでしょう。からかわないでください、斎宮様……」 「いいえ……このくじは、君が恋する人は、君の永遠の記憶になれる、という意味だよ」 だから強く生きて、これからずっと。 大切な人が皆逝ってしまっても、君が生きていれば、 その人たちと過ごした日々は永遠に消えたりしない……