旅をしてきた旅人は、その花を胸元に飾った。 自由に生きるため、旅人は故郷の贅沢な生活を捨てた。 異邦の碧く澄んだ湖で、彼は顔が曇った少女に出会った。 「旅人か…いいだろう、誰でも」 「琴師?じゃ、その美しい言葉と音楽で私を侮辱しないで」 「ただ、私を覚えてほしい、今の私を」 「『祭り』の生贄として捧げられる前の私を」 故郷を捨てた旅人は、その花を胸元に飾った。 自分以外にはだれも愛せなかったから、すべて捨てることができた。 そんな彼だったが、約束通りに少女を覚えて、自分を危険に晒した…