「私は世界を救うことに決めた!」 美奈姫はそう言った。 「だから言っただろう、世界を救うなんてありえない。俺みたいなバカ共が何回試したかは分からないが、この世界は壊れていく定めなんだ。」 「そんなこと知らないわ、私は姫よ。姫は世界を救うものでしょ?」 「いや、そんな設定は聞いたことがない。それに、俺の知る限り、お前は破滅をもたらす姫だろ。」 「誰かが言ったじゃない、破滅も新たな始まりだって。」 「どこからそんなことを聞いたのかは知らないが、その設定は古すぎだ。もし誰かがそんな物語を作ろうものなら、さっさと常夜国に捨てた方がいいだろう。」 (耳を塞ぐ) 空の塔の頂上で、武士と姫は傍若無人に、その無意味な会話を続けている。 そうは言っても、実はその場には陰陽師の恰好をした人が数人いた。 「お前たちの知っての通り、奈苦羅の術は最初、衰亡していく世界の中の生命力を保存するために使われていた。」 この会話にもう耐えきれなかったのかもしれない、ストーリーを急ぎで進めるNPCのように、そこにいた最年長の陰陽師はやっと口を開いた。 「その保存された生命力を使うことができるのは……」 「だから、その考えを捨ててくれないか?」 武士は何も聞こえなかったかのように、長者の話を耳にしなかった。 この茶番はいつになれば終わるのだろう?